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つかさとTwitterとtwnovel。

さてさて。

つい、先ほどのエントリーで最近はTwitterをアクティブに使用していること、並びに柊つかさが好きなことに触れたのですが、この件について少々踏み込んでみます。

『らき☆すた』というのは、もともと角川のアニメ・ゲーム系雑誌に連載されていた四コマ漫画で、後にアニメ等のメディアミックス展開がなされた作品なのですが、いわゆる「オタク」な層との親和性が非常に高く、一昨年あたりからそちらの界隈に一気に浸透しました。

アニメに興味のない人でも、インターネットに触れていたら何かしらの形で一度はそのキャラクターを目にしたことがあるのではないかと思われます。

それくらい、この作品とそのメインキャラクターは、常識というか共通知識としてインターネットに浸透したわけです。



さてと。

この作品の主要なキャラクターは約4名いるのですが、その中で僕が惹かれてやまないキャラクターが『柊つかさ』です。

説明が非常に難しいのですが、これはいわゆる「萌え」とかそういうのではなく、さらに言えば一般の「かわいい」という概念をも超越した、得体の知れない魅力を持ったキャラクターなのです。

いえ、原作では別にそんな得体の知れなさは本来持っていなかったのですが、ネットに浸透していくにつれて「つかさがかわいい」という概念が形而上的に先鋭化し、得体の知れない存在になってしまったのです。

「得体の知れない」と言うと不気味に感じますが、確かにある意味不気味な領域に達しつつも、しかし「かわいい」。

とにかく説明が困難なのですが、この件については、こちらの評論が非常に良くまとまっています。
つかさは「存在」「現象」「文字」そして「ブレイクビーツ」

いくつか文章を引用してみましょう。


>「つかさ」は「つかさ」です。「らき☆すた」の柊つかさ。だったもの。
>しかし、ここでは今や完全に素材と化した「つかさ」です。つかさ、ブレイクビーツ。

>とはいえ、そこに描かれるのは「つかさではない何か」ですが、「つかさ」以外の何者でもありません。ではなんぞや。なんだこの禅問答。 

>絵は自由です。しかし絵を描くとき、キャンバスが必要です。PCの上に最初に白い四角い枠を作らなければいけません。絵の具がなければいけません。ソフトがなければいけません。
>その素材と枠こそが、「つかさ」になっている気がします。


……とまあ、このように漫画・アニメのキャラクターを超越して、抽象概念にまで昇華された非常に特異な現象が「柊つかさ」なのです。

つかさかわいい。



----------------------------ここまで、つかさ----------------------------

----------------------------ここから、Twitterとtwnovel----------------------------



さて、私は長らくの期間、小学館の公募していた「携帯メール小説大賞」に掌編を送っていました。

特段作家志望と言うわけではなく、ただ小説めいた文章を書くのが好きだった自分にとっては恰好の遊び場だったわけですが、2009年の春をもって残念なことに公募が終了してしまいました。

これに代わる遊び場を見つけるには至っておらず、現在は公の場に公表することを前提とした小説は、特に書いていません。

何か思いついたときに、ちょこちょこと書いてはいるのですが、飽きっぽいところがあるのでどれも未完だったりと中途半端な状況です。

ある程度書けたら、同人誌を出すなり、出来によっては商業出版に持ち込んでみようかとは思っていますが、しばらくは先の話になりそうです。



ところで、最近はブログを放置してもっぱらTwitterを利用しているわけなのですが、このTwitterの世界に「twnovel」なる文化があります。

Twitterというもの自体が、一言メモみたいな場所なので1つのpostあたり140文字迄という制限があるのですが、この非常に限られた字数の中で小説を書く、という試みです。

1000文字でも小説として一つの世界を描くのがあれほど困難なのに、いわんや140文字をや、です。

しかし、これがなかなかどうして、140文字で小説を書くなどというのは想像を絶する険しさであるにも関わらず、逆に140文字で済むという「手軽さ」があるため、なんというかハードルが高くて逆にくぐりやすいような、却って多くの人の興味と参加を招く状態になっています。

一例として挙げられるのがこれでしょうか。
【Twitter小説】売体祭りまとめ【初めて体を売ったのは十歳の時。】

見ていただければお分かりの通り、突発的な出来事であるにも関わらず、たった一晩のうちに延べ50名以上の書き手が同じテーマでのtwnovelに挑戦しています(僕もその流れに乗っかった一人なのですが)。

以前にケータイ小説についてちらりと雑感を述べたことがあるのですが、このtwnovelという新しい文化も含め、「小説」を取り巻く現状はもの凄い勢いで変化、もとい多様化しています。

それだけメディアの種類が増えたということなのでしょう。

この潮流は、到底私一人で追えるようなものではありませんが、こういったドラスティックな時代に生まれることが出来たのは、非常にラッキーだと思っています。

次はどんな変則小説が出てくるのやら。


----------------------------ここまで、Twitterとtwnovel----------------------------




----------------------------ここから、つかさとtwnovel----------------------------

ところで、実はこのエントリの本題はここからです。

「つかさ」という特殊な文化、「twnovel」という特殊な文化について説明をしたところですが、自分はこの二つの組み合わせに挑戦したことがあります。

時期はちょっと前で、秋頃なのですが、毎晩寝る前に「つかさ」の登場する「twnovel」を2週間ほど書き続けました。

全13本のtwnovelですが、そこに出てくるつかさはみんな違います。

少なくとも柊つかさではない何かです。

ですが、他の概念とは置き換え不可な「つかさ」です。

そういった意味では、みんな違うつかさですが、みんな同じ「つかさ」です。

とにかく、そういった特殊なアプローチから何かが表現できないかと実験したものがこの「つかnovel」。

せっかくなので、ここにまとめてみます。



#1
犯行現場から押収されたのは、ありふれた8つほどのつかさだった。S警部はため息をつく。今じゃ、つかさなんて珍しくもない。つかさと犯罪病理を結びつける言説もなりを潜めた。それでも、慣習でつかさを保管しなければならない。どちらが病気? 今日も警察庁につかさが増える。


#2
その村の主食はつかさだった。あるときは天から降り、あるときは地から生えるつかさを、村人たちは平等に配分した。ある年、村からつかさが消え、多くの犠牲者が出た。残った人々は魚や獣を食べ、植物を食べることを覚えた。その後、つかさは復活したが、もう誰もそれを見ていない。


#3
彼の祖父の代はつかさとともに育ったが、彼らはつかさを知らない。彼はまだ見ぬつかさを求め、やがてそれを見つけた。が、彼はその姿を記憶していない。余計な情報だったからだ。忘れた方が美しい。だからこそつかさは消えたのだし、この体験は彼だけでなく私や貴方のものでもある。


#4
僕の左手には、つかさが棲んでいる。拇指の付け根、拇指球筋のあたりで、一日の半分くらいは眠っている。そして時折外出する。程なくして帰ってくるが、つかさがいないと少し寂しい。街で見かけるどこか寂しそうな面持ちの人達も、やっぱり左手のつかさが出かけているのだろうか?


#5
最近は、お手軽タイプのつかさが増えているらしい。紫のつかさA液と、黄色いつかさB液を、適量の水か牛乳によく混ぜる。できあがりは5分くらいだろうか。このつかさ、少々水っぽいのが玉にきずだが、なかなかどうして、よく働く。


#6
目覚めると、僕はつかさだった。同居人は変わらず同居人で、紫陽花も変わらず紫陽花だ。つかさはというと、変わらずつかさで、僕にはなっていない。つまり、僕だけがいなくなって、僕とつかさだけがつかさ。僕はいない、なんという幸福。その綺麗な事実で、世界は消えた。サヨナラ。


#7
彼が尿意を催し、駅の厠へ駆け込む。いざ放尿、その瞬間、便器につかさがいると気づく。一度出しかけたものは引っ込まぬ、しかし出すことも出来ぬ。結局彼は舌を噛み切って爆発するしかなく、駅は蒸発する。これが、テロ組織の手口だ。このテロの目的は、首謀者さえ知らぬと云う。


#8
「そのつかさは、かつてつかさでなかった」と貴方は言った。そして、いずれつかさでなくなる、とも。わたしにはそれがよく分からない。貴方は、貴方でなくなった。わたしもわたしでなくなるだろう。じゃあ、つかさも? 貴方は答えない。つかさも答えない。わたしはよく分からない。


#9
つかさ。


#10
つかさの声がする。つかさの匂いがする。つかさが視える。だけど、触れられない。手を伸ばしても届かない、届いても何もない。それでもあたたかい。ここにいるとあたたかい。だから、この部屋にいよう。触れるもの全てが冷たい外の世界よりも、触れられないつかさだけのこの部屋に。


#11
光りあれ。神の気まぐれな一言で、光速は宇宙の尺度となった。神は天を作り地を作り、星々を作り獣を作り、そして最後に人を作った。その後、神は休んだという。神はつかさを作らなかったが、しかし神が休まなければつかさは存在しなかっただろう。休むとはつまり、そういうことだ。


#12
つかさの、夢を見た。それはとても心地良く、どこまでも広がるような、壮大な浮遊感に満ちた夢だ。ああつかさよ。今日もつかさの夢を見よう、そして明日も。現実はくだらない。日々自分の役割を変えながらふわふわと繰り返す現実の日常より、つかさに包まれた、夢の世界に生きたい。


#13
つかさが、消えた。どこを見渡しても存在しない。「今まで通りだよ?」「何も消えてないじゃん?」「そもそも『つかさ』って一体何?」周りはそう言う。……そうなのかもしれない。つかさが失くても、何も変わらない。最初から失かったのかもしれない。でも、だからこそ、寂しい。




以上。

ちなみに、「# EX」としてつかさRecordsというネットレーベルのジャケットにも番外編を提供しています(ついでに楽曲も提供しています)。

ご興味があれば、そちらの方も是非。
by cos_ary | 2009-12-14 21:47 | 小説


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