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走り書き:WWDC2010で発表されるかもしれないことまとめ

走り書きメモです。

思いつき次第、随時追加するかも。



というわけで、発表まで残り1日を切ったWWDC2010。

発表されるかもしれなさそうな事柄をメモしておきます。

ちなみに、Gizmodoは通行証をもらえなかったらしい。いい気味だ。



・新iPhone
→これは「されるかも」じゃないけども。

・本格クラウド
→今回のメインはこっちじゃないかとの噂。そうだったら良いな。

・新iTunes
→クラウドの一環にして要。いまだに64bitがないのもおかしいし。

・新MobileMe
→クラウドの一環にして要その二。無料アカウントの開始など。

・新AppleTV
→iPhone OSが載るとか載らないとか。

・Safari5
→ここにきて急浮上しつつある噂。HTML5完全サポート等。

・iPhoneとfacebook
→iPhoneの連絡先とfacebookがシンクするという専らの噂。

・新iLife
→ここから願望。待ってます。

・新OS X
→スノレパの次はどうするんか、そろそろちょっとくらい教えてよ。

・新iMac
→WWDCで出てくることはないだろうけど。待ってます。

・予想もしてない何か。
→一番の期待はコレですよ。



新ハードの仕様については概ねリークされちゃってるから、それを逆手に取って新ハード以外にフォーカスを当てたプレゼンとかやったらジョブズまじ神だと思う。
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by cos_ary | 2010-06-07 08:30 | 雑記

iPadアプリをまとめてレビュー

iPadの日本発売を控え、熱気が高まっている今日この頃。

我慢できず一足先に使い始めた身として、気になるアプリのレビューをしたいと思います。



【気になる電子書籍たち】

iPadは万能野郎で、あのサイズの板を!手に持って!インターネットをしているだけでも!ハートがきゅんきゅん!なわけですけれど、やはり気になるのは「電子書籍リーダーとしてのiPad」です。

では、主要な電子書籍リーダーアプリを見ていきましょう。
iBooks
d0042155_21141157.jpgApple謹製、iPadで読書と言えばまずはこれです。

つい先日、ようやく日本語にも対応して、日本アカウントからもダウンロードできるようになりました。

とにかく美しく完成度の高いインターフェイスで、快適な読書ができます。

iPadを買ってまず最初にダウンロードすべきアプリがこれでしょう。

唯一にして最大の難点は日本人にはStoreがほとんど使えないこと。

せっかく秀逸なStoreと連携しているのに、英語の無料書籍しか現在アクセスできません。

ソフトバンク新書あたりが突破口になって日本語書籍や有料書籍が読めたらなー、と思います。今後に期待。



Kindle
d0042155_21231188.jpgやんややんや。

AppleのiBooksの正当な対抗馬がこのKindleです。もちろん無料。

Kindle専用端末もありますが、iPadでKindleの電子書籍が読めるんだからiPad一台あれば別にKindle専用端末はいらない気もします(あれはあれで、電池が保ったり画面が紙っぽかったり無料でネットが出来たり、なかなかメリットも多いみたいですが)。

iBooksと違って、こちらは米国の有料の書籍をワンクリックで購入できます。

数は少ないですが、漫画なんかを日本語でAmazonから自己出版している人なんかもいます。

コンテンツの充実という点では、iBooksの一歩先を行っている感ありです。



i文庫HD
d0042155_21354194.jpgさて。日本語書籍リーダーのキラーアプリがやってきました。

セール価格で700円とやや高めですが、値段以上の価値はあります。

iBooksに良く似たインターフェースで、青空文庫の書籍やPDFファイルの閲覧ができます。

青空文庫リーダーとしても素晴らしいし、PDFビューアーとしても最高峰と言えるでしょう。

ScanSnap断裁機があれば、手持ちの本をPDFに変換するのも大した手間ではないですし。

「CDをiTunesで取り込んで、iPodに入れて持ち歩く」のと同じ感覚で「本をScanSnapで取り込んで、iPadに入れて持ち歩く」時代がやって来つつあります。

i文庫HDでそれを実践している人も、ちらほら現れています(含自分)。

ただ、本棚やフォルダ管理が煩雑だったり、PDFの扱いが不安定だったり、満点とはまだ言えません。発展途上です。

ただ現在進行形でアップデートがされ、細かいバグなどは改善されていますし、安心して今後に期待ができます。

PDF快適に読めるのは魅力的だけど、700円(セール後は900円)はちょっと……、という方にはBookmanCloudReadersなんかの無料アプリもなかなかオススメです。



メイドのたまご1 / いちば仔牛 For iPad
d0042155_21582768.jpgiPad向け電子書籍は、上で述べたようなプラットフォームアプリだけじゃなくて、単独のコンテンツがアプリとしてリリースされる、という形ももちろんたくさんあります。

京極夏彦さんが新刊を紙とiPadで同時に発刊するというニュースがありましたが、あれもアプリとしてのリリースのようです。

こうした流れの中で、Circle.msというところが同人コミックのiPad配信に乗り出しています。

この『メイドのたまご』なる作品は、そのβテスト第一弾。

同人コミックゆえ、ページ数などは控えめなのですが、内容はなかなか悪くなかったです。

無料というのもすごいですし、iPadに表示される漫画がここまで綺麗で読みやすいものなのか! という良い衝撃もあります。

同人誌と言えば二次創作やエロが主体ですが、iPadではその手のものはAppleの審査を通らないため、こういうオリジナルの良質な作品が今後日の目を浴びることになるのでしょう。楽しみです。



Alice for iPad
d0042155_2391422.jpg1000円という高級路線ですが、iPadの電子書籍と言えばAlice、というくらいの定番中の定番です。

これを見せたら「iPadすげー!」ってみんな言います。

なにはともあれ、このプロモーション動画がスゴイ。

要するに「仕掛け絵本」ですね。

ただ、仕掛けのほとんど全てはプロモーション動画の中に出てくるので、製品を購入してそれ以上の驚きがあるかというと、ぶっちゃけないです。



easy drawings
d0042155_2353405.jpg安倍吉俊さんの画集です。

iPadの広い画面、綺麗な液晶を存分に堪能できます。

安倍吉俊さんはiPhone向けに同人誌を出したりもされているんですが、画面の広いiPadだと全然違いますね。

村田蓮爾さんの画集もiPhoneで出てるんですが、iPad化されないかなー。



産経新聞HD
d0042155_22102999.jpg本もそうですが、新聞や雑誌もiPadで読みたいところ。

そこで例によって先陣を切ってくれたのが産経新聞です。紙面がそのままiPadで読めます。

iPhoneアプリの頃から大いに話題になっていた産経新聞ですが、やはりというべきか、iPadに参入してくれました。

現在は無料で読めますが、いずれ1500円/月の課金制になるとのこと。

……うーん。少し高いかも??

ここで、裏技が一つあります。iPhone版の産経新聞アプリは特に課金の予定が明記されていないのです。

iPhoneの画面サイズで産経新聞の紙面を読むのは決して快適とは言えませんでしたから、確かにiPhone版を有料にあうるのは酷です。妥当な判断でしょう。

で、こういうことを言っていいのかわからないんですが、実はiPad版の産経新聞HDiPhone版の産経新聞って、iPad上ではそこまで画質が違わないんです。

2倍表示モードで一回ダブルタップした状態の拡大率だと、この拡大率の時のみ、iPhone版産経新聞でもiPad上でクリアに表示されます。

iPad版の産経新聞HD
d0042155_22234072.jpg


iPhone版の産経新聞
d0042155_22235794.jpg


勿論、画面の広さなど多くの部分で産経新聞HDの方に分があるわけですが、iPhone版の産経新聞アプリで画質を落とすような対策をされない限りは、覚えておいて損はないかと……。あんまりこういうせこい真似は好きじゃないですが。




【電子書籍よりよく使う! ネットワーキング系】

初っぱなに電子書籍を持って来ちゃいましたけど、やっぱりiPadでよく使うのはネットです。

と言うわけで、こいつがないと始まらない、ネットサービス系のアプリたちです。



DropBox
d0042155_2247182.jpg入れろ。

問答無用で「入れろ」と言いたいアプリです。

サードパーティーアプリ向けにAPIを公開し、今後ますます重要性が高くなるであろうDropBox。

使い方は無限大です。

もう、とにかく入れて。使って。



Instapaper Pro
d0042155_22391985.jpg600円の有償アプリですが、それだけの価値は十分あります。

要は「あとで読む」サービスなのですが、とにかく環境が充実しています。

Twitterクライアントだったり、RSSリーダーだったり、多くのアプリがInstapaperへのエクスポート機能を備えていますし、ブラウザから使えるブックマークレットもあります。

Instapaper ProはiPhoneとiPadに両対応しているので、iPhoneと両刀使いの人なら600円でiPhoneにもインストール可能です。

ネットを見ていて気になる情報があったら手軽にInstapaperに放り込めるので、重宝しています。

人によってはソーシャルブックマークなりEvernoteなりをそのような用途に使うのでしょうが、僕の場合は概ねInstapaperで一元管理です。



Evernote
d0042155_22513878.jpg個人的には、この象のアイコンが胡散臭くてあんまり活用してないんですが、巷で人気のEvernoteです。

使い込めば、第二の脳として記憶を頑張ってくれるらしいです。

無料だし、便利らしいし、とりあえずダウンロードしておくと良いのではないでしょうか。



Tweetings for iPad
d0042155_23311896.jpgTwitterクライアントは有料・無料問わずたくさん試したのですが、現時点でのベストはこれです。

Twitepadも良い線いってたんだけど……。

Twitter関連のアプリは数も多いですし、人によって好みがあると思うので、しばらくは無料のTwitterrificあたりを使いながら無難に様子を見るのが賢いかもしれません。



NewsRack
d0042155_2301247.jpgまたもや600円。

GoogleReader用アプリです。

インターフェイスが実にこなれていて使っていて気持ちよいのと、先述のInstapaperを始め各種サービスと連携しているのとで、大変重宝しています。

RSSで配信された情報を、十分な広さの画面で、手に持って気軽に読む。

新聞の未来系を見た気がします。これぞiPadの醍醐味!!



Memeo Connect Reader
d0042155_23244225.jpgGoogleドキュメントのファイルと同期できるビューワです。

ドキュメントの編集はできません。

GoodReaderとも連携する優れもの。

インターフェイスが洒落てます。



らじおぱっど
d0042155_2319147.jpg「ねとらじ」聴取アプリです。

iPadの広い画面を生かして、左カラムに番組情報を表示しつつ、右に掲示板を表示して書き込み、といった使い方ができます。

OS4以降ではマルチタスクが一部実装されるので、おそらくこのアプリでねとらじ放送をバックグラウンドに流しつつ、他の作業……みたいなこともできるんじゃないでしょうか。



tumblrFrame
d0042155_23443977.jpgTumblrの写真をひたすらスライドショーするだけのシンプルなアプリです。

Tumblrビューワというよりは、小洒落た写真を表示してくれるフォトフレームアプリと捉えた方が良さそうです。

なので、ダッシュボードをチェックするのには不向きで、Dockとかに立てかけて、いい感じのスライドショーでムードを作りたいときなんかに有用なアプリです。

こんなアプリ出されたら、市販されてる普通のデジタルフォトフレームとかもうゴミじゃないですか……。



Midomi SoundHound
d0042155_01174.jpgiPhoneでも定番の鼻歌検索アプリです。

「鼻歌検索を大画面でやる意味があるのか?」などと侮っていましたが、これはスゴイです。

広い画面を有効に使って、動画やら何やら非常にリッチな構成になっています。それでいて、煩雑すぎない。

すごいです。有料版もあり。



Dailymotion
d0042155_065829.jpgYouTubeの調子が悪いときとか、何かと重宝します。








【ゲームはどうよ!】

ゲームにはそんなに手を出していないんですが、iPadのゲームは携帯機と据置機の中間を取ったような、独自の路線を築きつつある感じがします。



Tap Tap Radiation
d0042155_0135146.jpgiPhoneでも定番のリズムゲー、Tap Tapシリーズです。

「大画面だと却ってプレイしづらくないか?」と思ったのですが、全くの杞憂でした

大画面、イイです。Tap Tapの世界に没入しますね。iPhoneに戻れないです。

ゲーム自体は無料で、追加の曲が有料という商業モデルですが、無料ダウンロードの曲もたくさん用意されています。

有料曲の中には、レディー・ガガなんかの超メジャーアーティストもあって、これがまた背景画像なんかもアーティスト専用のものになってて大変GOOD。



Aurora Feint 3
d0042155_0192072.jpgこれまたTapTapと同じく、iPhone初期からの定番中の定番、パズルゲームのAurora Feintです。

最近いたるところで目にするOpenFeintの親玉ですね。

なぜかRPG風の世界観で、タッチ操作や加速度センサを生かしたパズルに取り組みます。

RPG風の世界観なので、突然敵にエンカウントして、パズルで戦ったりします。

色々とわけがわからないのですが、有無を言わせない妙な説得力があります。



Touch Hockey Extreme: FS5
d0042155_0263553.jpgこれまた定番のエアホッケー。

iPhoneより広くなった画面で、iPadを挟んだ人対人対戦も快適です。

大画面になっても相変わらず、自滅ばっかりしてしまいます。



Labyrinth 2 HD Lite
d0042155_038640.jpgこれまた定番の……って、本当にiPhoneでの定番ゲームの、しかも無料のものしか紹介していない自分の保守っぷりにびっくりしつつ、ええと、定番のころころ迷路です。

iPhoneと比べて画面が大きくなったことで、球が実際のパチンコ玉くらいの大きさになってよりリアルになったところが大きな進歩でしょう。

この無料版だけでも、それなりのステージ数があって楽しめます。

気に入った方は有料版を買うと良いと思いますが、有料版はゲンナリするほどステージの数が多いので注意してください。



Real Racing HD
d0042155_0445937.jpg無料ゲームばかり紹介した反動か、一気に高級なアプリになってしまいました。

まあ、これも定番であることには変わりないでしょう。定番レースゲームです。

iPadを横持ちしたときの幅というのが、ちょうどハンドルっぽい感じで、良好なプレイ感覚が得られます。

レーシングマシンは色々カスタマイズできるんですが、面白いのはフォトライブラリの画像を車体のスキンとして使えちゃうところです。

そう、簡単に痛車が作れるのです。

というわけで、そんな意外な楽しみ方もできるので、少々値は張りますがおすすめアプリです。



以下、追って更新予定です。。。今日はおやすみなさい。
【調べ物にもiPad リファレンスアプリ】
http://itunes.apple.com/jp/app/articles-for-ipad/id364881979?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/id364195592?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/pubmed-on-tap/id301316540?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/wolframalpha/id334989259?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/id297431331?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/id364469351?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/cat-commander-pro/id364895266?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/molecules/id284943090?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/ichocolate2/id363212993?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/icocktail/id364273225?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/id372994518?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/id372592875?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/weather-hd/id364193735?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/id365999653?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/3d-brain/id331399332?mt=8

【広い画面で快適 楽器アプリ】
http://itunes.apple.com/jp/app/korg-ielectribe/id363714043?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/groovemaker-free-for-ipad/id363516638?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/synth/id364905862?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/pocket-organ-c3b3/id342144696?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/fingerpiano-for-ipad/id367603417?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/pro-keys/id364419812?mt=8

【指での描画はけっこう難しいけど ペイント・フォトレタッチ】
http://itunes.apple.com/jp/app/draw-for-ipad/id363207607?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/artstudio-for-ipad/id364017607?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/sketchbook-pro/id364253478?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/livesketch-hd/id364888269?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/photogene-for-ipad/id363448251?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/fastfinga/id320090110?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/penultimate/id354098826?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/photopad-by-zagg/id364758617?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/tiltshift-generator-for-ipad/id364225705?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/cameratan-for-ipad/id373059286?mt=8

【その他もろもろ】
http://itunes.apple.com/jp/app/pages/id361309726?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/numbers/id361304891?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/keynote/id361285480?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/goodreader-for-ipad/id363448914?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/iannotate-pdf/id363998953?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/mocha-vnc-lite/id284984448?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/cherry-blossom-wallpapers/id363373871?mt=8
http://itunes.apple.com/jp/app/id364361728?mt=8

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by cos_ary | 2010-05-28 01:25 | 雑記

コメント欄について

これまで不毛の地だったこのブログですが、にわかに人が集まっています。

人が誰も来なかった時期には、頂いたコメントにはなるべく返事をつけるように心がけ、スパムコメントと思しきコメントにも相手をしていました(それだけ暇だった)。



今回のHIVに関するエントリはおかげさまで様々な反響を得ることができ、私にとっても非常に有意義な記事となったのですが、その反響が予想を超えて大きく、例えばコメント欄に頂いたコメントも、まだ全てには目を通せていない状況です。

今までのように全てのコメントにレスを返すというのは、今の状況では残念ながら自分にはちょっと不可能そうです。ブログをエントリした者として無責任と思われるかもしれませんが、ここにお詫びしたいと思います。

ただ、これだけ多く寄せられた意見をまるごと看過するわけには到底至れないわけで、後日コメント欄への返信となるエントリをアップしようと思っています。

恐らく少々の時間がかかってしまうこと、全てのコメントには対処できないであろうことが予期されますが、ご了承願えればと思います。
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by cos_ary | 2010-05-07 17:05 | 雑記

HIV差別がひどすぎて驚いた(後編)

(前編はこちらから)


急ごしらえの前編が思った以上にたくさんのアクセスを集めたみたいで、多くの人に意見を読んでもらえたのは喜ばしいのですが、かつてない人入りに少々びびっています。

ちょうどこのブログを始めて満5年になろうかとしているのですけど、ここ4日のアクセス数それまでのトータルのアクセス数匹敵しそうなんですよ。

なにしろ、それまで1日10人も読んでなかったですから。ここ。

そんなわけで軽くびびりながらも、平静を装いながら続きを書こうかと思います。

とりあえずは、前編でさんざん「後述する」と言っておきながら結局後述しなかった(ゴメンナサイ)HIVの医学的側面について、ざっくりとまとめます。

HIVについては、知っているつもりでも誤解している人が結構多そうなんですよね。

特に医療職との関係とかになると、かなり誤解が深そうです。

例によって長くなるんですが、誤解を解くべく、以下に文章を連ねてゆきます。



■4. 「事実上ゼロ」のリスクを気にする?

どうもHIVとAIDSの違い(基本中の基本の知識ですが)を説明できる人ですらすごく少ないんじゃないかという気がして、本当はその辺の基礎から順を追って書くべきなんでしょうが、やっぱり今回も一番伝えたいポイントを最初に持ってきます。

というわけでいきなり核心。

「HIVを持った医療従事者から患者にHIVは感染するの? どうなの?」

はい。それではお答えしましょう。

「感染は起こり得ますが、適切な対処によりその可能性を下げることができます。残念ながら可能性をゼロにすることはできないのですが、『事実上ゼロ』にすることなら可能です

というところですね(根拠は後ほど示します)。

さて、というわけでなんだか感染の危険が高そうな医療職ですが、医療従事者が患者(ならびに同僚)にHIVを感染させてしまう危険性は「事実上ゼロ」と言えます

それなら安心。別に看護師がHIVキャリアだとしても、安心して質の高い医療が受けられますね!

……という話で誰もが納得してくれればカンタンなんですが、たぶんどうやらそうはいかなさそうです。

「事実上ゼロ」≠「ゼロ」だからです。

「ゼロ」は「無」ですが、「事実上ゼロ」は「有」です。

だから、リスクは「ある」か「ない」かという議論になると、リスクは「ある」ということになります。

そして、そのことをもって「リスクがあることは怖い」と考えてしまう人が少なくないようです。

しかし、果たしてそれは適切な判断でしょうか?

——ええと、ちょっとここでいったん確認しておきますね。大事なことなので。

前編でも言ったことなんですが、思想信条や言論は個人の自由です(ただし、その思想信条を他人に強要したり、思想信条に基づいて他人の人権を侵害してしまってはダメです)。

なので、僕は自分の意見を押し付けるつもりはないです。

ただ、その思想やら信条やらが非合理なもので、そしてその非合理さに気づいていないのなら、今一度考えてみるべきだと思います。

今回の話で言うと、「事実上ゼロ」のリスクを怖れることは明らかな「非合理」です

非合理であることを自覚しながら、それでいて「事実上ゼロ」のリスクを怖がることは、これはもう個人の自由だと言えるでしょう。
(僕は昆虫の蛾が怖くて怖くてたまらなくて、別に生命を脅かす存在でないと理解してても、やっぱり無理です。ゼッタイ無理。超怖い。ちなみに蝶も怖い。蝶怖い。無理)

だけど、非合理であることを自覚せずにリスクを怖れてしまっていては、なんだかそれは非常に残念です。

さらに非合理であることを自覚せずに、それでもって他者の人権を脅かす言論を行なってしまっていては、残念を通り越して論外というか、論外を通り越して残念というか、もう色々アウトです。

以上、確認でした。それでは本論に戻ります。

「事実上ゼロ」のリスクは本当に怖いでしょうか?

実は「事実上ゼロ」のリスクは、何もHIVの感染に限ったことじゃありません。

ほとんど全ての医療行為は、必ず何らかのリスクを伴っています。

医者が診察に使う聴診器が実は細菌まみれかもしれないし、看護師の採血では血管に針を刺すつもりがうっかり神経を傷つけて一生麻痺が残るかもしれません。

出された薬には重大な副作用があるかもしれませんし、もしかすると薬の種類からしてうっかり間違われているかもわかりません。

そんなのいちいち全部気にしてたらとても怖くて病院になんてかかれませんが、病院に全くお世話にならなかったら、病気の早期発見や治療の機会を逃して悪化させたり死んだりするかもしれません。

そもそも病院に限らず、わたしたちの周りは「事実上ゼロ」のリスクだらけです。

スーパーの野菜は農薬まみれかもしれないし、かと言って無農薬野菜には寄生虫が棲んでいるかもしれません。

2秒後に小さな隕石が頭の上に降ってきて、打ち所が悪くて死ぬかもしれません。

全部可能性はゼロではありません。ほとんど無視して構わないレベル、「事実上ゼロ」と言って良いかとは思いますが、しかし「ある」か「ない」かと言われると、実際に「ある」リスクです。

まあ確率から言えば、たぶん隕石に当たって死ぬ確率よりは野菜の寄生虫に中って死ぬ確率の方が高そうではありますが、しかしほとんどの人はどちらの可能性も「事実上ゼロ」と見て、気にかけることもなく暮らしているでしょう。

そして、これらの「気にしていない」リスクたちと「HIVを持った看護師に医療行為を受けることでHIVに感染する」リスクとを明確に区別する客観的な理由はありません
(どの確率から「事実上ゼロ」とみなせるか、というのは確かに多少複雑な問題でしょうが)

あるとしたらそれはもう主観的な理由で、そこまで来ると個人の自由になってしまいます。

僕が「蛾が怖い。蝶もダメ。無理」と言っているのと同じで、「HIVキャリア怖い」も個人の思想としては誰もそこに干渉できません。

ただし「HIVキャリア怖い」は個人の思想でしかなく、誰かの人権に影響を及ぼすことは当然許容されませんし、その思想による不利益をこうむったとしてもそれは自分の責任です。そのことだけは十分理解しておかねばなりません。



■5. 医療従事者からのHIV感染:「事実上ゼロ」ってどれくらい?

それでは改めて、医療従事者から患者へのHIV感染が起こる可能性について考えてみたいと思います。

ここで参照するのは[HIV, HBV, or HDV transmission from infected health care workers to patients]という2003年の論文です。
(※Pubmedではタイトルが「HIV, HBV, or HDV〜」となっているのでそのまま引用しましたが、おそらくこの「HDV」「HCV」の誤植です)

Since 1972, 50 outbreaks have been reported in which 48 HBV infected HCWs (39 surgeons) transmitted the infection to approximately 500 persons. To date, 3 cases of transmission of HIV and 8 confirmed cases of transmission of HCV (to a total of 18 patients) from infected healthcare workers to patients have been reported.

The risk of transmission of HIV, HBV and HCV from HCWs to patients is associated primarily with certain types of surgical specialties (obstetrics and gynaecology, orthopaedics, cardiothoracic surgery) and surgical procedures that can expose the patient to the blood of the HCW: exposure-prone procedures.

この論文は、1972年から2003年までの感染症のレポートの中から、HBV(B型肝炎ウイルス)、HIV、HCV(C型肝炎ウイルス)の三つのウイルスにおいて、医療従事者から患者への感染が何例あったかの総数を報告したものです。
(※1972年時点ではHIVというウイルスはおろか、AIDSという病気すらも知られていなかったため、HIVについては1980年代以降の統計)

結果は、

・HBVは48名(うち39名が外科医)のキャリアから約500人の患者に感染。
・HIVの感染は3例。
・HCVは確実なものは8例(全部で18例)。


というものでした。更に、

・産科婦人科、整形外科、心臓血管外科といった特定の外科領域
・医療従事者の血液に曝露されやすい外科手技


が、まず第一に感染リスクと関連している、とのことです。

このデータを見る限りでは、病院でHIVに感染するリスクはHBVに比べればずっと低いし、HCVに比べても低そうだと言えますし、さらに特定のハイリスクな外科領域以外では、HIVの感染リスクは低そうだということも言えます。

だから、普通の看護師が普通に仕事をするのは問題なさそうです。

先ほどのデータではHIVとは桁違いに感染例の多いHBVですが(ちなみにB型肝炎だって十分怖い病気です)、医療従事者がHBVキャリアである場合について厚生労働省が情報を提供しています。

詳Q56: B型肝炎ウイルス(HBV)に感染している保健医療従事者は仕事上の制限を受けますか?
詳A56: HBVに感染した保健医療従事者が仕事上の制限を受けることはありません
 一般に、HBV感染の有無にかかわらず、すべての保健医療従事者は、厳格な無菌操作と手洗いの励行、基本的な感染予防をこころがけ、注射針などの鋭利な器具による外傷を負わないように気をつける必要があります。
 このことを守っている限り、HBVキャリアの保健医療従事者から患者へ感染するリスクはきわめてまれです

(※太字筆者)

厚生労働省の見解ではHBVを持っていても「保健医療従事者が仕事上の制限を受けることはありません」し、感染するリスクも「きわめてまれです」。

いわんやHIVをや、です。HIVの場合、感染するリスクはさらにまれです。

針刺し事故の予防と対策という論文を参照してみましょう。

まず、

針刺し事故による感染の確率は HBV, HCV,HIV の順で、HIV が最も低く、約 0.4% といわれている。

とのことで、さらに

予防内服を事故後 1〜2 時間以内に開始することによって、感染確率は 1/5 に低下すると報告されている。

だそうです。

ええと、ここで「針刺し事故」について解説しておきますね。

針刺し事故というのは、まあそのまんま「注射器とかの針が刺さる」という事故なんですが、注意して欲しいのはこの事故の被害者は患者ではなく医療者であるということです。

どういうことか。

採血を例に取りましょう。採血の手順はだいたい以下のようなものです。

新しい注射器を準備する→血を抜く→抜いた血を試験管などに移す注射器と針を廃棄する

このとき、アンダーラインを引いた箇所で、うっかり針が自分の手に刺さってしまうことがあります

これが「針刺し事故」です。

このとき、患者側にはとくに被害はありません。

被害をこうむるのはうっかり自分の手に針を刺してしまった医療者自身で、患者の血液中にHBVなどのウイルスがいた場合、感染するおそれがあります。

件の報道に対する反応でも「HIVキャリアの看護師が採血するとか危ねーよ!」という意見が数多く見られましたが、そんなことはないです。

もしも医療者→患者への感染が起こるとしたら、先ほどの採血の手順において

新しい注射器を準備する→血を抜く→抜いた血を試験管などに移す→注射器と針を廃棄する

このアンダーライン部分で「うっかり自分の手に針を刺す」ことが必要で、まあその場合は当然その注射器は廃棄してまた新しいのを出します

うっかり自分の手に刺してしまった注射器をそのまま捨てずに患者に刺したとしたら感染は起こり得ますが、そんなことHIVの有無以前に大問題ですよ。汚染された注射針を刺すとか。いくらなんでも医療者として非常識すぎます。

というわけで、まとめます。

HIVを持っていても、自分に刺した針をさらに患者に刺すという非常識なことを行なわない限り、通常の看護業務で患者にウイルスをうつすおそれはなく、仮にその事故が起きたとしても感染の確率は0.4%で、事故後速やかに薬を飲むことでこの確率を1/5下げることができる(0.08%)。

もちろん、針刺し以外にも感染の経路はあるでしょうが、少なくとも外科領域以外では、通常看護に支障がないと結論して良いでしょう。



■Ex. 「差別」って何だろう

「ゼロリスクを求めるあまり、非合理な思考に陥ってしまう」こと、それから「本当に医療現場において医療者から患者へのHIV感染はリスクが小さい」こと。

前回述べきれなかったこの辺りの点について、自分なりにまとめてみました。

前編と合わせて、一人でも多くの人の役に立てば幸いです。

ところで、「差別」ってどういうことなんでしょう。

良い表現は何かないかなあと、色々考えてみたのですが、自分の中での現時点の考えはこれです。

「ものごとを評価する『モノサシ』の歪み」

そして、「その歪んだ『モノサシ』で、他人の人権を侵すこと」

要するに、こういうことなんじゃないかなあと。

モノサシが歪む原因は色々あると思います。

前編で強調したのは「無理解」でしたし、後編で強調したのは「非合理な判断」でした。

これらはどちらも、理性によって克服できるはずのものです。



完璧なモノサシというのは残念ながらどこにも存在しません。

それどころか、測られるべき尺度というのもはっきりと姿が見えないものですし、姿が見えないだけではなく文化や社会の変化によって常にその形を変えています。

だから、自分のモノサシが歪んでいるかどうか、適切に判断するのはとても難しいし、歪みを直すのも容易じゃない。

エラソーに語っている僕だって、いざそのモノサシを人と比べたら、きっと知らないところ、気づかないところで凄くいびつになっていると思います。

一番危険なのは、自分のモノサシが正しいと思い込んでしまうことです。

これは思考停止で、そして自分の思想信条を他人に強いる行為です。

まずは自分のモノサシを信じ込むのをやめて、問題を理解しようと努め、そして合理的に判断するように心がける。

差別といったものをなくすには、こういったささやかで、しかしながら難しい努力を続けることが大切なんだと思います。



ここまでの長文、読んでくださりありがとうございました。



■ 参考リンク

HIV/AIDS先端医療開発センター
HIV や AIDSについて、基礎知識から解説してあります。

[HIV, HBV, or HCV transmission from infected health care workers to patients]
本文中で引用した論文です。Abstract(概要)のみですが、結果を把握するのには十分です。

針刺し事故の予防と対策(※PDF)
針刺し事故の対策について述べられた日本語の論文です。

厚生労働省:健康:結核・感染症に関する情報
B型肝炎ウイルスと保健医療従事者について、厚生労働省が提供する情報が読めます。
残念ながらHIVのことはここのページには載っていないようです。

HIV / エイズと働く世界(※PDF)
ILO(国際労働機関)が定めたHIV / AIDSと職場における行動規範です。
HIV / AIDS の患者の「働く権利」や、職場における感染予防など、国際的な規範が記されています。
付属資料にHIV / AIDS の基本知識などがまとめてあります。



■ 参考ブログ(随時追加していきます)

痛いニュース(ノ∀`):HIV感染の看護師「病院から退職を強要された」 病院「退職を求める意図はなかった」
そもそもの発端です。

つなごう医療 中日メディカルサイト | 看護師退職勧奨 『HIV 差別なくして』 -
中日新聞の記事です。
今回の事件について、看護師サイド・病院サイドの言葉がより詳細に報じられています。
ならびに、国内でのHIVに対する偏見が根強いことなどへの疑問提起もされています。

HIVキャリアを理由に看護師を解雇することは正当か? - NATROMの日記 -
今回のニュースに対する一部ネット上の反応について、いち早く書かれた批判の一つです。
様々な例を用いながら、簡潔に問題点をまとめています。
『HIV, HBV, or HCV〜』は、このブログで紹介されていたものです。

とりあえず、HIV抗体検査に行ったほうがいいと思う - キリンが逆立ちしたピアス -
HIVへの無理解や差別について、「HIV/AIDSはどこか遠くで起きている問題だという感覚があること」や「実際にリスクがあることを自覚し、現実に直面するのが怖いこと」が原因の根っこにあるのでは?という鋭い指摘です。
実際にHIV抗体検査を受けた際のエピソードも交えてあります。

Saomix elements通信 HIVキャリアへの退職強要を考える
『HIV, HBV, or HCV〜』の概要を紹介するとともに、ご自身の献血経験にも触れています。

日本人の民度 - 医療報道を斬る Doctors Blog 医師が発信するブログサイト -
「日本人は『リスク』を自分で評価できない」という話を、「民度」というやや挑発的なフレーズを用いて述べています。

ため息つくほど度し難い II - ちょっと呟いてみる -
当ブログのコメント欄でも議論になった「看護師がHIVを意図的に感染させる」という行為について、率直かつ鋭い指摘を書かれています。
この議論は自分のブログの中で巻き起こったものなので、いずれ改めて意見を述べる必要があるかと思っていたのですが、ほとんど代弁(さらに+α)して頂けた感じです。有り難うございます。

HIVに感染した看護師が病院側から退職勧告を受けた件 - 適当な日記 -
こちらは、専門家ではなく一般人の方が書かれたブログで、一般人の感覚としての「本当に安全なの?」等と言った素朴な疑問を述べていらっしゃいます。
一般の方が抱きやすい疑問・考えの代表的なものが、コンパクトにまとまっています。一般の方の考え方を知るという点て、逆に専門知識のある人にとって読む価値のある記事かもしれません。
また、コメント欄においてNATROMさんが疑問の一部に解答されていて、こちらも大変有意義な情報となっています。

差別感情と差別行動 - いま作ってます。 -
今回のHIV報道についての様々な反応について、それらを「レベルに分けて分類する」というアプローチから解釈を試みています。
理性を持った人間が「どのレベル」を目指すべきか、単にHIVの問題を超えて示唆に富む記事です。

HIVを知らない病院は、すぐ車椅子で流血事故を起こすような病院だそうだ - 法華狼の日記 -
今回の報道での、病院側における対応のまずさを念入りに検証しています。
NATROMさんも「HIVキャリアというだけで看護師を退職させる病院には私は受診したくありません」とおっしゃっていましたが、私も同感です。
HIVに対する知識もなく、平然と差別が行なわれる病院にはかかりたくありません。2chの反応とは別の意味で、看護師はこの病院を辞めて正解だったのかもしれません。

これも市民感覚かな - 新小児科医のつぶやき -
HIVに関する「市民感覚」がまだまだ非合理なものであるという現状について考察をされています。
「医療者としては地道に理性に訴えての啓蒙を続けるぐらいしか対策が思い浮かびません。今回の問題が5年、10年先には違った市民感覚になる様に努力を重ねる事が一番重要と考えます」とのこと、私も全くの同意見です。その思いから、一連の記事を書くに至りました。

HIV感染は退職をすすめる根拠になりません - 感染症診療の原則 -
感染症のプロフェッショナルの方です。
コンサルタント等もされている方だけあって、一文一文の切れ味が素晴らしいです。
短いエントリですが、非常に価値の高い文章です。

地獄へ道づれ - 男の魂に火をつけろ! -
歯に衣着せぬ痛快な筆致で、HIVキャリアに対する差別発言やTwitterでの悪質なデマについて批判しています。
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by cos_ary | 2010-05-06 02:25 | 雑記

HIV差別がひどすぎて驚いた(前編)

こちらのニュースでの反応があまりにひどすぎたので。

痛いニュース(ノ∀`):HIV感染の看護師「病院から退職を強要された」 病院「退職を求める意図はなかった」

本当にニュースに対するレスの流れがひどくて、匿名掲示板の意見だからとかそういうレベルじゃなくて、あまりにもアレすぎるからネタかとも思ったけどネタだとしても全く面白くはないし不快でたまらないわけで、もしもこれが本気で一般人のHIVの認識なんだったら相当危険だな、と。

一般人のごく一部だけの認識だとしても、やっぱり相当危険だなと。

思想信条の自由、言論の自由なんてものはこっちだってわかってます。別に強制しやしませんよ。

でも、もしHIVについてあなたが無知で、差別というものにも特に頓着がなく、漠然とした偏見に基づいて無邪気な発言や思想をしているのなら、ちゃんとその意味を知った方がいい。

申し訳ないが、このニュースとそれに対するネットでの反応を見た私が、誰かから「悪いのは誰か」と問われたなら、「外野の一般人だ」と即答する。

以下、少し感情的になって言葉が乱れたり論理展開が怪しくなるかもしれないが、私見を述べさせていただきます。



■0. 何が起きて、どういう反応があったのか?

上記リンクを開いてざっと目を通していただくのが一番なんですが、一応簡単に事態のまとめを書いておきます。

ことは昨年の秋。愛知県内の病院において、30代看護師がHIV陽性と発覚したことから始まります。HIVには感染していますが、AIDSは発症していません。

ここで今後の就労について、看護師は病院幹部と話し合いました。

>その際、看護師は治療後の職場復帰に支障がないことを明記した診断書を示したが、
>副施設長は「うちでは看護職は続けられない。運転や配膳(はいぜん)の仕事はあるが、
>差し迫って人が必要なわけではない。他の理解ある病院に面倒を見てもらっては」と発言。
>看護師は同十一月末、副施設長に「退職を強要されたと受け止めている」と伝え、
>辞表を提出した。


つまり看護師は診断書も示して「今後の就労に問題はない」と主張していたのに対し、病院側はやんわりと(?)退職を勧めます。

ですが、後になって病院は退職勧奨を否定します。

>「退職を求める意図はなかった」

のだそうです。じゃあどういう意図だったんだよって話ですが。

で、元記事にはちょっとした解説みたいなものがついています。いわく、

>国の「職場におけるエイズ問題に関するガイドライン」では、HIV感染者を差別しないよう求めているが、医療現場は対象外とされている。医療現場向けのガイドラインは策定の必要性が指摘されてから十五年以上たっても整備されておらず、国の不作為が今回のような問題を引き起こす一因となっている。

だそうで、どうやら悪いのは国だそうです。国って便利ですね。

さて、このニュースについてのネット掲示板(2ch)の書き込みをまとめたのが、冒頭に掲げたリンクです。

一応さまざまな意見があるのですが、ほとんどは看護師を批難するものです。

これはすさまじくて、中にはHIVに感染したってだけで人間性まで否定するような発言なんかもあります。ナチュラルにあります。

一部抜粋してみましょう。

「行きたくねぇそんな病院」「医療従事者がエイズとか本末転倒じゃん。自業自得のくせに何が強要されたとか。こんな看護師嫌だね」「差別じゃねえだろ。接触性の病気を持った人間に寿司職人やらせられねえって話だろ」「かわいそうだけど、一般的な感覚ではHIV陽性の看護師がいる病院なんて行きたくないよな」

ちなみに、これらは差別的な発言を作為的に抽出したものではなく、50発言おきに(目分量で数えてるので多少ぶれはあるでしょうが)定間隔に発言を拾ったものであることを書き添えておきます。



■1. 差別をする人間は、それが差別であるとわからない

最初は、HIVとAIDSの違いだとかHIV治療の現状とか、そういう医学的な前提知識についてまず述べようかと思ってたんですが、退屈な文章で最後まで読んでもらえなかったら元も子もないので、一番言いたいことを最初に持ってきました。

僕が一番ショックを受けたのは、ネット上でHIV感染者について(あるいはこの看護師個人について)差別丸出しの発言をしている人のほとんどが、どうやらそれが差別になっていることを自覚していないようだ、ということです。

しかしまあ、考えてみればそんなものかもしれません。

明らかな差別だと十分に理解していれば、いかにネットの匿名掲示板とはいえ、それを自覚的に全面に押し出せる人は少数でしょう。

差別、という概念がことさらにややこしい問題に発展するのも、いつでも差別される側が問題に対して敏感であるのに対し、する側は鈍感でそれが差別だと気づかないことがほとんどだからです。

わかっててやってたら単なる悪質ないじめですよね。わからずにやっているから差別なのです。

要するにバックグラウンドにある問題は無理解なんじゃないかと。

今回のケースで言うと、多くの人がHIVについて理解をしていなさすぎるために、適切な配慮ができていないということでしょうか。

(たまたま僕は医学を学んだ経験があり、HIVについても最低限の知識はあるので、「これは明らかな差別じゃないか」と指摘できる立場にいるわけですが、専門外の領域になるとつい自覚のないうちに似たような差別発言や差別行為をおこなっているかもわかりません。人の振り見て我が振り直せ。自分に対する注意喚起も兼ねてこの文章を書いています)

問題がHIVということで無理解が生じやすかったのかもしれません。もう少し分かりやすい例に置き換えてみましょう。

ちょうど昨日、白人と黒人についての小話を書いたところですし、黒人に置き換えてみましょうか。
(自分が何気なく書いたこの小話も、無自覚な差別に満ちているかもしれません)

さて、とある黒人の看護師が、黒人であることを理由に勤めていた病院を退職させられました。

これに対してインターネットでは、

「行きたくねぇそんな病院」「医療従事者が黒人とか本末転倒じゃん。自業自得のくせに何が強要されたとか。こんな看護師嫌だね」「差別じゃねえだろ。接触性の色素を持った人間に寿司職人やらせられねえって話だろ」「かわいそうだけど、一般的な感覚では黒人の看護師がいる病院なんて行きたくないよな」

という意見が書き込まれています。
(※アンダーライン部が、HIV→黒人に置き換えたところ。「接触性の病気」は、ここでは「接触性の色素」に変えました)

……これは、さすがに誰が見ても「ひどい人種差別発言」であることは明らかですよね。

無作為に抽出してきたレスが元なので、「HIV」を「黒人」に変換したらナンセンスな文章になったものもありますけど、まあ元の文章も十分ナンセンスなんで。感覚的にはそのまんまこれでOKかと思います。

特に、最後の「かわいそうだけど、一般的な感覚では黒人の看護師がいる病院なんて行きたくないよな」。これは非常に的確に、この問題に根付いた差別を暴いていますね。

実は結構見られたのがこの言説です。

いわく、「HIV感染者が就労してる病院なんて行きたくないのが当然なんだから、病院は辞めさせて当たり前」。

更には「むしろ看護師が自分で辞めないのがおかしい。辞めて当然なのに医療を続けようと思うこと自体が自分勝手でどうかしている」とまで続きます。

ひどい。これはひどい。

詳しくは後述しますが、看護師がHIV感染者でも、適切な業態で適切に勤務している限りは患者にウイルスを伝染すことはまずあり得ません。

で、この「感染のリスクはまずあり得ない」ことを知らずに、先程述べたような「そんな病院行きたくない」「辞めさせて当然」と言っていたのなら、別にこれは差別じゃないと思うんです。

ちゃんと事実を知って「そっかそっか、自分が無知だったよ。それなら病院で働いてても問題ないね」と言い直してくれるのであれば、これは単なる無知で、差別ではないでしょう。

でも、どうやらそうじゃなさそうなんです。

多くの意見を読んでいると

「もし実際にリスクがないんだとしても、やっぱりHIVは嫌だよ。そんな病院行きたくないよ。病院は看護師を辞めさせて当然だし、看護師も自ら辞めるべきだよ」

というニュアンスが見てとれるのです。こっちは明らかに差別ですよね。

だって「俺、黒人に看護されるの嫌だよ。だから病院は黒人の看護師を解雇しても別に良いんだよ」と本質的になんら変わりないですから。

そして、そういう発言をしておきながら、おそらくほとんどの人が差別しているという自覚を持ってない。

これは合理的な区別だ、とか思ってる。

おいおい、どうなのよそれ。

HIVに対する誤解なんかもあるのかな。とにかくみんな無自覚に差別しまくってる。

これ、昔のハンセン病(らい病)がきっとこんな感じだったんだろうなー、とか思いますね。

というわけで、ちょっと話は脇道に逸れるんですが、歴史は繰り返すとも言いますし、人間の性は変わんねえな、と。成長しないんだな、と。むしろ繰り返すからこそ、人は歴史から学ばなきゃいけないんだなとか思ったので、次項はHIVを離れてハンセン病のことを書いてみます。



■2. ハンセン病の歴史

こんな所で私なんぞが歴史を解説するよりも成書を読むなりWikipediaを参照するなりしてもらった方が良いんでしょうけど、手短かに済ませたい方のためになるべく簡単に、ハンセン病の歴史——特に日本における歴史について、書いてみます。

たぶん、現在の日本における目に余るHIV差別について考えるのに、貴重な歴史でありましょう。

ただ、大雑把なまとめになるので細所はいい加減な部分があるかと思います。ご了承ください。

ええと、そんなわけでハンセン病です。昔は「らい病」とも呼ばれましたが、現在では後者の病名は差別用語にあたるとされています。

病気の名称なんてのはけっこう身も蓋もないものが多くて、そういうのに比べたら「らい病」(漢字では癩病)なんてのは語義的には特段「差別的」ではないのですが、これが差別用語として取り扱われるというのはそれだけ深い差別の歴史があったということです。

ハンセン病は「らい菌」という細菌によって起こる感染症です。「らい病」はNGだけど「らい菌」はOKという辺り、尋常ならざる歴史が垣間見える気がするんですが、いかがでしょうか。

ともかく、このハンセン病というものは細菌に感染することで発症し、発症すると主に皮膚と神経に症状が出ます。

他の皮膚病でもそうなんですが、皮膚に症状が出るというのは要するに外見的に症状が出現するということなので、見た目的にかなりインパクトがあるわけです。

更に顔面や手足の変形といった症状も伴うために、皮膚症状とあいまって見るからに病が進行していることが分かるような状態になってしまいます。表現がいささか不適切であることを承知の上で書きますが、外見上気味が悪いのです(少なくとも、そう捉えられている時期があった)。

そして、ハンセン病はヒト−ヒト感染で伝染する感染症です。接触感染に加え、飛沫感染(※細菌が含まれた鼻汁などの飛沫を気道から吸い込むことで起こる感染。飛沫の到達距離は1m程度と比較的近距離である)による感染経路があります。

そんなわけで、ハンセン病は「気味が悪い」し「近くにいるとうつる」から、どこか遠くの施設に患者を隔離して閉じ込めよう、ということになりました。

日本では昭和以降この活動がエスカレートし、一時は患者を見つけ出しては強制的に施設に送還し、らい病を根絶しよう!というムードにまでなっていました。患者の人権も家族の人権も無視です。

で、そんな「気味が悪く」て「近くにいるとうつる」ハンセン病ですが、どうやら薬を飲んでちゃんと治療を受けている人からは感染しないみたいだぞ、ということが徐々に分かってきます。

そんなわけなので、国際的には「隔離やめようぜ」という流れになるんですが、日本は戦後に至っても隔離を続けます。隔離診療所内では、患者の介護を職員ではなく別の患者が担当させられるなどの人権無視が当然のように行なわれ続けました。

「らい予防法」が廃止され、こういった隔離政策がなくなったのはなんと1996年のことで、当然のごとく国ひどくね?って裁判になって、やっぱり当然のごとく国が敗訴しています。

……とまあ、すごく大雑把にまとめましたが、過去にこういうことがありました。

現在ではハンセン病に関する偏見などはかなり改善されていますが、それでも時々ホテルが宿泊を拒否したとかのニュースがあります。

ハンセン病であることを理由にホテルが宿泊を拒否するといったことは、当然のことながら不当な差別に相当するわけで、こういったニュースに対して「うつらないって分かっててもハンセン病患者と同じホテルとか嫌だし。他の利用客のことを考えたら拒否して当然じゃね?」とでも発言しようものなら、前時代的な恐るべき差別主義者と捉えられて、きっと炎上します。

断言しても良いですよ。100%炎上する。間違いないです。

しかし、HIVについては同じ差別がなぜかまかり通ってしまう。

それはやっぱり、多くの人にとってそれが差別であるという自覚がないからでしょう。

だからこうして、一人でも多くの人が、泡沫ブログでも良いから意見を発信しなきゃいかんのだと思います。



■3. なぜ病院は看護師に退職を求めたのか

さて、元の問題に戻ってみます。

今度はネットでの反応ではなく、病院の対応にフォーカスを当ててみます。

まず、病院の言い分を再び引用してみましょう。

>「うちでは看護職は続けられない。運転や配膳の仕事はあるが、差し迫って人が必要なわけではない。他の理解ある病院に面倒を見てもらっては」

だそうです。

「うちでは看護職は続けられない」というのは、言い換えるなら「他の病院なら看護職を続けられる」です。

まあ日本人的な遠回しな表現で「うちでは」=「他でも」なのかもしれませんが、すぐ後で「他の理解ある病院に面倒を見てもらっては」と言っているのでそういうわけではなさそうです。やっぱり「うちではちょっと……。でも、他なら良いよ」ということのようです。

ということは、この病院は少なくともHIV陽性でも病院で働いて良いと考えていることになります。「※ただしよその病院に限る」という但し書きがつきますが。

これは重要なポイントですね。つまりは「医学的に言って、HIVに感染していても医療に従事して問題ない」ことを認めているわけですから。

本気で患者への感染リスクが医学的に問題になり得ると思ってるなら他の病院ではなく他の職を勧めるでしょう?

他の病院での看護職を提案している以上、病院は「看護師のHIVは、患者の感染リスクにはならない」ことを理解しているはずです。

じゃあ、なんで退職勧奨をしたかというと、おそらくクレームが怖いからでしょう。

決して院内感染のリスクを避けるための退職勧奨ではありません。クレームのリスクを避けるための退職勧奨です。

クレームとは何か?

それは、インターネットの掲示板に書き込まれたコメントのような言葉たちに他なりません。

現に大声でそういう発言をする人がたくさんいる。

だからこそ、事なかれ主義の病院は看護師に退職を求めたのでしょう。

クレーマーを怖れたというのは推測に過ぎませんが、しかしネットでの反応を見るに、HIV感染者を看護師として働かせていたことが明らかになったとき、この病院にものすごいクレームが殺到するであろうことは容易に想像がつきます。

どう見ても退職を求めている以外の何ものでもないのに「そういうつもりじゃなかった」とかわけのわからん言い訳をしてる点も、この病院が波風の立つことを嫌っている様子が見てとれる気がします(深読みしすぎかもしれませんが)。

——さて、それではこの事件で最も悪質で無責任なのは誰でしょう?

HIVを保有しているにも関わらず医療職を続けようとし、病院からの退職勧奨を差別ではないかと指摘した看護師?

看護師のHIV陽性は院内感染のリスクにはならないと認識しつつも、患者や市民からのクレームを怖れて看護師に退職を求めた病院幹部?

必要性を指摘されながらも、15年以上の長きに渡ってガイドラインの策定を先送りし続けてきた国?

それとも、HIVについて適切な知識を持たず、偏見により感染者を一方的に非難する一般人たち?

先ほどの、ハンセン病の歴史を振り返ってみましょう。

ハンセン病対策において、国の対応は拙速極まりないものでしたが、なぜ国の対応はそこまで遅くなったのでしょうか。

もちろん、国の無理解も大いにあったのでしょう。

ただ、本当にそれだけなのかは、ちょっと疑問です。

この辺りの詳しい経緯とかその頃の空気感については、ちゃんと様々な資料を読み込んでから発言すべきなのでしょうが、僕は一般人の無理解も、解決を遅らせた原因なんじゃないかと思っています。

施設からハンセン病患者が社会に復帰するに当たって、「ハンセン病患者が近所にいると思うと気味が悪い」「ハンセン病患者と同じ病院には行きたくない」という偏見が、絶対あったはずです。

この辺は僕も勉強が十分でないので、憶測による発言になっているのですが、しかし自信を持って断言できます。なんせ、HIVに対するあからさますぎる差別を目の当たりにしましたから。

こういった一般人の無理解については専門家がきちんと啓蒙すべきですし、必要なら国がそれを補助すべきです。

そういった点も含めて、国の拙速には重大な責任があったと思います。

しかし、国だけじゃなくハンセン病患者をさんざん差別してきた一般市民にだってやはり責任はあるでしょう。

え、あるよね?

だけど、国と違って一般市民は訴えられることはありません。実名を出して堂々と差別活動をしてたなら話は別でしょうが、普通の一般市民は差別に加担したところで裁判で責任を追及されるわけでもありません。

みんなも差別してるから。

これでその場の風潮は乗り切れます。

いや、ちょっと適切じゃないですね。なぜならその人はそれが差別だと思ってないですから。

みんなそう言ってるから。

ですかね。

んで、時代が変わって「やっぱりあれは差別じゃね? 問題じゃね?」とかいうことになれば、国にでも責任を押し付けて知らん顔してればいいわけですし。

何なら「これだから国の役人はいけないんだ」とか言っちゃっても構わないわけですし。

お気楽だねえ。

本当、絶望したいくらいお気楽だわ。

こういう人は、いざ被差別者になったらどうするんだろう。まあ、たぶんきっと被差別者になっても声だけはでかいんだろうな(偏見)。そんで他の人からは「自意識過剰だろw」だの「そんなんで差別になるのかよ。何でもかんでも差別って言うな」だの言われるんだろうな(偏見)。

はあ。一体誰が得してるんだろうね。ギョウウング。



ええと、そろそろ眠いので続きは明日か明後日に書きます。

言いたいことの半分はたぶん言えた。残りの半分が、HIVとAIDSと、あと院内感染についての医学的な話です。

本当は医学的な話の方を先にしようと思ってたんだけど、より汎用的で本質的なことをとにかく意見表明しておきたかったので、こういうスタイルにしました。

急ごしらえの駄文で申し訳ないのですが、後ほどちょいちょいと手直しして読みやすくはしていきます。

(後編はこちらから)



追記:有名ブロガーで医師のNATROMさんがこの問題についてブログを更新されています。順調にブックマークを集めて多くの人に読まれているようで、ちょっと安心しました。
HIVキャリアを理由に看護師を解雇することは正当か? - NATROMの日記

追記2:泡沫に過ぎなかったこのブログですが、驚くほど多くの方にこの記事を読んで頂くことが出来ました。Twitterで宣伝してくれた方や、ソーシャルブックマークに追加してくださった等々、本当にどうも有り難うございました。

追記3:NATROMさんのブログ、当ブログに続いて、こちらのブログもはてブ on Twitterにピックアップされました。HIV抗体検査を受けた体験談などにも言及されています。
とりあえず、HIV抗体検査に行ったほうがいいと思う - キリンが逆立ちしたピアス

追記4:saomiさんのブログでもこの問題を取り上げていただきました。医学論文を引用して客観的な事実を紹介したり、またご自身の50回近くにわたる献血歴を経ての自身の考えを述べたりと、貴重な意見の詰まった記事です。
Saomix elements通信 HIVキャリアへの退職強要を考える

追記5:ごめんなさい。自分のミスによって後編のアップが大幅に遅れています。多くの方の関心を集める話題に至っただけに、なるべく速やかに記事を復旧してエントリを更新できるよう努めますので、今しばらくお待ちくださいませ。

追記6:お待たせいたしました → HIV差別がひどすぎて驚いた(後編)
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by cos_ary | 2010-05-02 02:10 | 雑記

世界がもし二人の村だったら

最近ブログがあっぷるあっぷるしてるので、たまには本業にちなんだことでも書いてみます。

ええと、一応改めて言っておきますね。僕の本業は医学です。



さて、ただいま大学院にて一生懸命(たぶん)勉強に励んでいるわたくしですが、先日教科書を読み返していると面白いデータが載っていました(データは1994年のものです)。

ちなみにこの教科書ですが、日本語版も手頃な値段で、内容も専門外の人が読んでも理解できるように噛み砕いて書かれており、広く一般にオススメです。是非ぜひ読んでみてください。

面白いデータ——面白いという表現はもしかするとやや不適切かもしれないのですが——それは、全米における、黒人と白人の死因別死亡率比です。

各死因ごとに、黒人と白人で死亡率がどれくらい異なるかを比べたものですね。


例えば糖尿病を例に取ると、黒人/白人比で死亡率比は"2.4"です。これは、黒人の糖尿病による死亡率が白人のそれより2.4倍高い=黒人は白人に比べて2.4倍糖尿病で死にやすい、ということを表しています。

日本に住んでいるとなかなか実感しづらいかもわかりませんが、こういった人種別の統計は、医療を考える上では非常に重要です。社会的な点から医療にアプローチする際にももちろん重要ですし、臨床の現場でも大事な情報になります。

先ほど例に挙げた糖尿病で言えば、2.4倍という死亡率比はもしかすると黒人が白人に比べて質の高い医療を受ける機会が少ないという原因があるのかもしれません(※)。もしそうであるなら、これは社会的な医療の問題です。

あるいは、もしかすると体質的に黒人は糖尿病に罹りやすかったり、糖尿病が悪化しやすかったりするのかもわかりません(※)。もしそうであるなら、この傾向は臨床の現場でも重要なファクターになってきます(黒人の糖尿病はハイリスクと看做して、より注意深く診療するなど)。

今回は人種別のデータですが、男女別、年代別など様々な切り口でこういったデータが公開されています。そして、それぞれに医療の質を向上させていくためのヒントが隠されています。

(※:アンダーライン部はあくまでも参考のために考え方の一例として挙げた仮説で、実際にそれが正しいのかどうかは、保証いたしかねるものです)



さて、今回その人種別死因別死亡率比の表を見て興味を覚えたのは、黒人/白人比が最も高い死因黒人/白人比が最も低い死因のコントラストです。

米国における人種問題の一面があまりに鮮やかに描出されていて、色々考えさせられました。

まず、死亡率の黒人/白人比が最も高い死因。これは他殺です。

その率比は圧倒的で、6.2倍。

つまり、黒人は白人の6.2倍殺されやすい——。あまりに身も蓋もない事実ですが、しかし事実は事実。

1994年とやや古めのデータですが、実際に米国で起こっていることです。



対して、死亡率の黒人/白人比が最も低い死因はというと、先ほどの他殺と見事なまでに対照的で、今度は自殺です。

黒人/白人比で0.6なので、1 ÷ 0.6 = 約1.7。だいたい白人の方が1.7倍ほど自殺しやすいということでしょうか。

先ほどの6.2倍と比べるとやや控えめな率比ではありますが、主要な死因の中で、死亡率の黒人/白人比が最も低いものは紛れもなく自殺です。



世界がもし100人の村だったらなんて本がありましたが、さて、ここで思考実験です。

世界がもし二人の村だったら。一体何が起こるのでしょう。

とりあえず、一人が白人、もう一人が黒人であるとします。

死亡率比のデータでは「黒人は他殺されやすく、白人は自殺しやすい」という傾向が明らかになりました。

そうすると、ここから導き出される顛末はこうなります。



1.黒人が白人によって殺害される。
     ↓
2.残った白人が自殺する。
     ↓
3.そして誰もいなくなった



と、思考実験の結果はなかなか衝撃の結末を迎えてしまったわけですが、この結果を「世界の縮図を描出した、なんとも示唆に富むものであるなあ」と捉えるか「一つのデータのみを根拠にして極端な例に当てはめると、ナンセンスな結果しか出ないものだなあ」と捉えるか、はたまた「この文章を書いた有好って奴は阿呆だなあ」と捉えるか、その辺りはみなさんに委ねたいと思います。
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by cos_ary | 2010-05-01 00:07 | 雑記

雑感:AppleはなぜFlashを嫌がるんだろう

AppleのFlash問題は色々なところで論議を醸していますが、結局のところ「FlashよりもHTML5に将来を見いだしたから」という建前通りの解釈でいいんじゃないかと思います。

いくら私怨があろうと、iPhoneやiPadほどの巨大なプロジェクトにそれを持ち込むのはナンセンスです。

ジョブズはわがままで気分屋のCEOとして名を知られていますが、同時に世界最高のCEOとしても広く名を知られている存在です。個人的な感情だけでFlashを排することはないでしょう。何せ、宿敵だったIntelとも手を組んだのですから。



ジョブズ復帰以降のAppleは、新製品の開発にあたって大胆な引き算を行なってきました。

初代iMacが良い例です。

iMacでは、当時主流だったプリンター接続用のシリアルポートを廃し、USBを採用しました。また、その当時はまだ現役だったフロッピーディスクのドライブもなくしました。



既に広く流通している規格を次世代のものに移行させるにあたって、一番のボトルネックになるのは、従来の規格が浸透しすぎていることです。

新しいものの方がより優れていても、積極的に乗り換える必然性がなければ、人々は従来の規格に留まろうとしてしまいます。

TVの地上波デジタル放送とかがその例ですね。無理やり力ずくで移行させないと、なかなかみんな乗り換えてくれません。そういうもんです。



Flashは広く流通した技術ですが、Adobeという企業が管理する独自形式です。

HTML5というオープンな形式で同じことが実現できるなら、そちらの方が望ましいでしょう。

ただ、FlashからHTML5に移行するには、世の中にはあまりにFlashが溢れすぎています。

そこを無理やりにでも打破することで、より明るい将来が開ける。Appleの打算は、目先の確執とかじゃなくて、もっと未来を見据えたものだろうと思います。

実際、iPhoneやiPadがFlashに対応してたとしたら、HTML5についての人々の関心はもっと低かっただろうし、WebサイトはもっとFlashに依存していただろうし。



ちなみに、Appleが新しいiPhone OSで、Flashを始めとするObjective-C, Java以外の開発環境からクロスコンパイラを禁止した件については、ここ(アップルはなぜObjective-Cにこだわるのか)に興味深い考察が載っています。

少々推測が過ぎる部分もあるかなあと感じられますが、一読に値します。なんといっても、ロマンがありますね。
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by cos_ary | 2010-04-29 01:26 | 雑記

簡単! Perfumeの見分け方

放置されていたブログの更新が続くのは好ましいのですが、話題がAppleのことばかり、というか、ほぼiPadのことばかりなので、たまには違ったことを。



さて。

「かしゆかです。あ〜ちゃんです。のっちです。3人合わせて Perfume です!」といえば、キュートな広島弁でお馴染みの3人組テクノポップアイドルユニット『Perfume』の有名な自己紹介ですが、皆さん「誰がかしゆかで誰があ〜ちゃんで誰がのっちか」ちゃんと分かりますか?

僕は、ついこの前まで3人の区別がつかず、というか半ば顔を憶えるのもを放棄していたので区別がつくはずもなかったのですが、ある簡単な「見分け方」を知って以来すぐに判別がつくようになりました。

今回はiPadレビューに変わって、その「見分け方」を少しばかり皆さんにお伝えしようと思います。



では、早速写真を見てみましょう。

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これは2010年4月28日現在、Perfumeのオフィシャルサイトを飾っているトップ写真です。

さて、誰が誰でしょう?

分かっている人にとっては至極簡単な問いですが、分からない人にとっては勘で答える他のない難問です。

つい先日までの自分がそうでしたが、Perfume慣れをしていない者にとっては、三人とも同じような顔に見えてしまいます。

では、どうやって見分ければ良いのでしょう?

コツはずばり、髪型です。

d0042155_22311837.jpg


明らかに1人だけ、髪が短いですね。顔の見分けがつかなくてもこれくらいなら分かります。

そして、ここで3人の名前を思い出してみます。

「かしゆか」「あ〜ちゃん」「のっち」

この中で一番短い名前は——?

そう、のっちです。

実は、Perfumeにおいて髪型と名前は相関しているのです。

いいですか。大切なことなのでもう一度言います。「3人の中で一番名前が短い『のっち』は、髪も一番短い」。

これでもう「誰がのっちか」で迷うことはありませんね。



さて、残りは「かしゆか」と「あ〜ちゃん」です。

このうちどちらか一方が同定できれば、3人の区別がつくことになります。

ここで注目するのは、やはり名前と髪型です。

まずは名前。「あ〜ちゃん」に注目します。

よくよく見ると、不思議に思えてきませんか? どうして「あーちゃん」ではなく「あ〜ちゃん」なのでしょう?

ここでもう一度、写真を見てみます。髪型に着目しましょう。

d0042155_22422158.jpg


どうやらパーマです。

拡大してみましょう。

d0042155_2245463.jpg


間違いなくパーマです。

もう、お分かりですね。

「あ〜ちゃん」の「〜」は、髪の毛のパーマを表していたのです。

そして、残ったのがかしゆかです。



「今回の写真はたまたまそうだったけど、髪型とか変わるんじゃないの?」

と思われるかもしれません。

念のために他の写真でも確認してみましょう。

まずは昨年のアルバムトライアングル(通常盤)のジャケットです。

d0042155_22595978.jpg


一目瞭然ですね。

左から、かしゆか、のっち、あ〜ちゃんです。



さらにもう一年さかのぼってみましょう。アルバムGAMEです。

d0042155_2341214.jpg

この写真では顔がはっきり写っていないのですが、髪型さえ分かればノープロブレムです。

そう、左から、あ〜ちゃん、のっち、かしゆかです。



いかがでしょう。

三年の時に渡って、髪型と名前の相関は失われていません。見事です。

もう、この方法さえ憶えておけばPerfumeの3人の区別で困ることはありません。

……ありません。が、一つだけ、難点があります。

それはこの方法が使えるのはあくまで3人一緒にいることが前提であることです。

髪型を比較して解答を導き出している以上、比較対象がなくなってしまうと途端にこの鑑別法は意味をなさなくなります。

次の写真を見てください。

d0042155_2314643.jpg


さて、これは誰でしょう……?

わかりませんね。

少なくとも、のっちではなさそうです。

かと言って、あ〜ちゃんかと言えばあ〜ちゃんっぽくもありますが、それも違うような気がするし、じゃあかしゆかかと言うと、それも違うような……。

残念ながら、名前と髪型による見分け方では、このようなケースは迷宮入りです。

ちなみに、正解はイ・ジョンヒョンでした。

迷宮入りして当然ですね。




d0042155_23261493.jpg不自然なガール/ナチュラルに恋して(通常盤)
なぜか3Dメガネをかけた人間たちに囲まれています。謎い。

誰が誰かは、もう説明の必要ありませんね?
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by cos_ary | 2010-04-28 23:29 | 雑記

iPadレビューレビュー

自分のレビューを読み返したら、iPadに心酔しすぎて気持ちの悪い宣伝者になってました。
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by cos_ary | 2010-04-23 17:54 | 雑記

'10年代以降、本の読み方はどう変わるのか

電子書籍と漫画のこれから (ゆるがぬほし)



『MEDIGIRL』でお世話になっている、創作における僕のパートナー、道端千揺さんがブログにて電子書籍についての考えを書いています。

はっきり言いましょう。2010年は、電子書籍というメディアのスタイルにとって、間違いなく決定的な転換の訪れる超重要な年です。

上記記事は、漫画描きという立場から、簡潔に分かりやすく電子書籍の将来についてまとめてあります。良エントリなので、是非読んでみられることをお勧めします。



……と、お勧めをしたものの、ところどころ読みながら「ここは違うんじゃないかな」と感じた部分もあります。

なので、そこを補足しながらその過程で僕の考えを紹介する——という形式で、電子書籍と「本」の将来像について考察してみましょう。

以下の文章は、基本的には上記記事「電子書籍と漫画のこれから」 を読んだことを前提にしてあります。

してありますが、一応未読の方でも話の筋は見失わない程度に本文を引用紹介していきます。



>iPad(電子書籍を読むための端末)がもうすぐ発売ということで、色んな人の意見を聞いたり、発言したりすることが最近多くなってきました。
(※アンダーラインは筆者)

とりあえず、最初の「ここは違うんじゃないかな」は、ここです。

揚げ足取りというか重箱の隅というか細かいツッコミで恐縮ですが、iPadは「電子書籍を読むための端末」ではありません。

iPadは「電子書籍を読むこともできる端末」です。シングルパーパスではなくマルチパーパス。

細かい違いですが、案外ここは重要です。

要するに、電子書籍というのはiPadにとって数ある使途の一つにすぎません。

数ある使途というのは、例えば音楽再生だったり動画再生だったり、写真やネットやメールにゲーム……etc、です。

これらの多目的の中の一つに、「電子書籍」が含まれるわけです。

このことは、実は非常に重要な意味を持っている——と僕は思っています。



さて、一見するとこの状態では「電子書籍」の扱いは軽いように見えます。

何しろ、iPadは電子書籍専用機ではないわけですから。色々できる機の、「色々」の一つが電子書籍ということで、要するに one of them に過ぎない。

でも、もう一度思い出してみてください。

その one of them 。「them」は何だったでしょう?

先ほど挙げた例では、「音楽再生だったり動画再生だったり、写真やネットやメールにゲーム……etc」です。

そしてこれらは、どれも「本」より新しくてリッチなコンテンツです。

そこに「本」(電子書籍)が並んだ、というのは非常に意義深いです。

one of them とは言ったものの、これまで「本」という古いメディアは、themには入りたくても入れてもらえなかったのです。

それがここにおいて、ようやく「電子書籍」が他のデジタルメディアと同じ次元にまで引き上げられた。

これは、「文字の誕生」「紙の発見」「印刷という技術」「活版から写植へ」といったイベントに並ぶ、書籍の歴史における重大なターニングポイントになるでしょう。



>iPadでは一度ダウンロードしたデータはコピーすることができず、その端末でしか見ることができないらしいです。
>ですが、紙の本と違って、機械はわりとすぐ壊れます。こういったものだと寿命はせいぜい5年くらいですかね。
>機械が壊れてしまったら、もう読めません。またダウンロードしなきゃいけません。
まあそんな感じで、「電子書籍は読み捨てが基本になる」と言えます。
>今ある漫画雑誌、特に週刊雑誌はかさばることこの上なく、最終的には全部捨てるという人が多いと思います。
>こういったものは電子書籍として配信すれば安くて便利になるんじゃないかなーと思います。

(※アンダーライン筆者)

さて、次の「ここは違うんじゃないかな」。

違うんだ、違うんだよみっちー(道端さんのニックネームね)。

確かにデータがなくなったら再ダウンロードは必要だけど、それは無料でできるし、同一のアカウントで認証されていれば別の端末でも読めるんだよ。

要するに、僕のiPadで購入した電子書籍は例えば僕のiPhoneでも読めるし、iPadを新しいのに買い替えたらそれで読むこともできるわけです。同じ「有好從桜のアカウント」があれば。

なので、別に本を読み捨てる必要はないです。

むしろ逆に読んでも捨てないということの方が、電子書籍の大きな特徴になります。



音楽を例にとりましょう。

言うまでもなく、20世紀の終わりに登場したiPodは音楽の聴き方を変えてしまいました。

iPodがあれば、ほとんど無制限と言ってもいいくらいの音楽を所有し続けることができます。

なぜなら、「コンテンツを所有するのに物理的なスペースが必要なくなった」からです。

部屋が狭ければ、聴かなくなったレコードやCDは処分してしまわないと置くスペースがなくなってしまいますが、iPodのようにデジタルデータで所有しているとそんなことは起こりません。

ハードディスクの容量の限界というのは確かにありますが、これについては年々劇的なスピードで容量が進化しています。事実上、容量の心配というのは多くの場合必要のないものになってきています。



同じことが、iPadと電子書籍でも言えます。

道端さんも言っているように「今ある漫画雑誌、特に週刊雑誌はかさばることこの上なく、最終的には全部捨てるという人が多い」のが現状ですが、もしもこれらの雑誌が電子化されれば捨てずに全部所有し続けることが可能になります。

物理的な書籍では図書館並の所蔵スペースが必要な量でも、デジタルデータならiPadの中に収まります。

お金を払って購入した雑誌を、空間の制約から処分する、などという必要はなくなります。

その内容を今後再び読むかどうかはわかりません。再読されない雑誌がiPadの中に何百冊も溜まっていくでしょう。

しかし、だからといってあえてそれを捨て去る意味はもうありません。

「置いておけば、何かの際にまた読むかも」くらいの気持ちで、いくらでも蔵書を増やすことが可能です。



>「出版社ブランド」や「ランキング」よりもっと信頼できるのが「書籍化」、という流れになりそうな気がします。
>今でも、人気のWeb漫画が書籍化されるってことはたまにありますが、その流れがもっと強化されるという感じでしょうか。
学問の分野では、誰が書いたとも分からないWebサイトの情報より、書籍になっているものの方が、
>遥かに詳しく専門的で信頼性があるというのは当たり前のことですね。それと同じで。

(アンダーライン筆者)

いやいやいや。

書籍化は内容の正しさを担保するものではないですよ! 道端さん騙されないで!!

世の中には、一般人の目には学術的に見えてもその実はトンデモ本、ってのがいっぱいあるよ!

良いですか。そのコンテンツが書籍化されるかどうか、その尺度は純粋に「売れるかどうか」の一点です。他にありません。

いや、「売れるかどうか」だといささか正しくないですね。「売れそうかどうか」。うん、これです。

学問の世界では、書籍になっているからといって、その内容が詳しく専門的で信頼性があるとは見なされません。

「詳しく専門的で信頼性がある」ものはたいていの場合、普通の人にとっては読んでてあまり面白くないものです。なかなか売れません。

なので、そういう情報を発信したい人がWebを使ってブログなんかに良質の情報を提供しているということもよくあります。
(ただし、Webではそれを大きく上回る数のいい加減な情報が出回っているのも確か)

「詳しく専門的で信頼性がある」情報は、学問の世界ではたいてい論文という形で発表されます。

ちなみに、多くの論文はいまや電子化されています。



上の方で、書籍の歴史におけるイベントを「文字の誕生」「紙の発見」「印刷という技術」「活版から写植へ」としていくつかにまとめたのですが、これらのイベントに共通しているのは「扱える情報の量が増えた」ことと「生産のコストが下がった」ことです。

これは電子書籍にも共通しています。

電子書籍においては、印刷・流通・在庫といった諸々のコストがかからないために、従来の紙の書籍に比べて圧倒的に低コストです。

逆に言えば、紙の書籍は相対的に高コストになるわけです。

それでもなお、紙の書籍として出版されるものはどんなものがあるのでしょうか。

やはり第一は「売れるもの」でしょう。

そして他には「物理的な書籍であるが故に価値のあるもの」が考えられます。例えば、飛び出す絵本、書き込み式の学習書、ペーパークラフト、付録つきの本、などです。装丁が綺麗な本とかも、含めていいかもしれません。

じゃあそれ以外、もっと他には何があるでしょうか?

色々考えてみたのですが、確実に「これだ!」と思えるものはちょっと思いつきませんでした。

ただ、「相対的な高コストを考慮してもなお、紙で出版するだけの価値があるもの」。そういったものは、確実に今後も紙の書籍として出版されます。

その「価値」は一体なんなのか? と問われると「ごめん、わかんない」なのですが、そういったものが間違いなく存在しているであろうことは、断言してもいいと思っています。

まだ具体的に形の見えない「価値」ですが、電子書籍の普及によって、おそらくそういったものが段々見えてきて、そして再評価されるんじゃないか。そう考えています。

逆に言えば、そういう「価値」のない紙の本は、近い将来淘汰されてしまう。とも言えますが。



【まとめ】
・iPadの登場により、電子書籍は他のデジタルメディアと同等の位置づけがなされた。
・膨大な数の蔵書でも難なく所有できるため、電子書籍においては週刊雑誌だろうが何だろうが、捨てる必要がない。
・紙の本は相対的に高コストになるため、「価値」のある本だけが残っていく。



道端さんのブログ記事では、他にも配信のことや電子書籍社会における漫画創作のことなど(というか、メインはそこ)について興味深い意見が載っています。

ところで、タイトルの「'10年代以降、本の読み方はどう変わるのか」ですが、いざ書き上げてみたらなんらそんな問いに答えていませんでした。

こいつは困ったちゃんですが、最後の「まとめ」にある3項目が十分解答を示唆してくれている気もするので、まあこれで良いよね。これでいいのだ。
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by cos_ary | 2010-04-12 20:51 | 雑記